2012年6月17日日曜日

スキャンダルの私物化




トーマス・デマンド展に行ってきた。

トーマス・デマンドを知ったのは
05年に国立近代美術館でやっていたドイツの作家を集めた展覧会だった。
その時のわたしのお目当てはヴォルフガング・ティルマンスだったけれど
トーマス・デマンドの『浴室』を観て
こんな収穫があるなんて!と興奮して美術館を後にしたのを記憶している。

というのもトーマス・デマンドの写真は一見ただの風景を撮ったもの。
でも何か無機質すぎないかな・・・と近づいてよく見ると
写真の中の風景は全部「紙」で出来ていることに気づく。
そして気になって作品リストを見ると
更にその風景は
実際あった事件の報道写真を元に紙で再構築され撮ったもの
ということを知る。

今回の東京都現代美術館での展示は
その流れを意識した二部構成とも言える演出がニクい展示だった。
最初の一周目は
単純に仕事の細かさで自然物を撮った作品に目を奪われていた。
森や洞窟や芝生など
本当に紙?と写真のギリギリまで顔を近づける。
そうやって紙で作られていることに感心して出口の方へ行くと
最後なのに作品リストが渡される。
それぞれの写真は何の事件の写真なのか、ということが書かれている紙。
そこから再度回るかどうかは自由だけれど
これはしないわけにはいかないと再び会場に入る。

物語を知る前と後では写真の印象が180°ぐらい変わる。
ふーん、って感じでさっき通り過ぎた写真の前で
今度は胸が押しつぶされそうな気持ちになっている。
東電の社員が地震発生後に
初めて原発に足を踏み入れて撮った写真を元にした「制御室」は
いかにその東電の社員が撮った写真が
世界的にセンセーショナルなものだっかのかが伺い知れて
しばらく写真の前から去れなかった。

トーマス・デマンドの創作のスタイルはどれも新しい。
既に報道されたものを再度自分の手法で報道する。
いかにも(コロンバインとか)、という事件じゃなくて
心象風景に近くなっているようなものばかり。
そのチョイス自体が作品とも言える。
社会的事件を自分の解釈で作品にしている読み物や映画は沢山あるけれど
アートという形で変に脚色せずに潔く私物化しているのは
他に見た事が無い。

うん、すごい、なんていうか、報道だった。




トーマス・デマンド展を見終わって
エントランスフリーのトーキョーワンダーウォール公募展も回る。
出口付近に会田誠プロデュースのTEAMマコプリの作品がドチャッと置いてある。
萌え少女が無数に描かれてあるピンク色のテントの中に
胸をマジックで描き殴られた人形やメンバーの等身大抱き枕や
苺やハートの柄の毛布がぐちゃぐちゃに散乱している。
クラリスはバッファロー・ビルの家に侵入するより
このテントに侵入する方が恐怖ではなかろうか、というぐらい

狂気・・・!

TEAMマコプリは今年の11月から森美術館で展覧会をする予定らしい。
あぁ・・・こわい・・・。
でも絶対観に行く・・・!